カテゴリー別アーカイブ: story

tokyo adrift 2006 08

そのパソコンなんだけど、ネットに繋がらないの
ソファの前に置かれた高さのちょうどいいテーブルに、
白いノートパソコンが置いてあった。

 無線LANの電波は順調に届いているし、新しく入れたという
対ウイルスソフトも特に悪さはしていそうに無かった。
恐ろしく動作が遅いのでいろいろ設定をいじって何度か再起動した後、
もう1台のノートパソコンも無線LANが繋がらない事がわかって、
無線LANのルータを再起動したら何事も無かったようにネットに繋がった。

 サキはいつの間にかネコのように僕の隣に腰掛けていて、
ワイヤレスマウスを調節する振りをして僕の手に一度触れたけれど、
僕は結構まじめにパソコンを直していて特に反応しなかった。
そう。ふとした瞬間にサキの手が触れた感覚がよみがえり、
後になって後悔するのだ。何であの合図に気づかなかったのだろうと。

 PCの調節が全て終わった頃には、サキは会社で終わりきらなかったの、
という新しいコンビニ向けスイーツの企画書をもう1台のラップトップで書いていて、
僕はいつの間にかソファで眠ってしまった。
たぶんサキはその間に、僕の携帯電話に「きみみたいにきれいな女の子」と
自分の電話番号を登録したのだろう。
たぶんそれは「きれいな女の子たちをよく家に送り届けるんだ」と
言った僕へのあてつけか、あるいはピチカート・ファイブを車の中で僕がかけていて
思いついたのかもしれなかった。悪くない。

 少しだけ眠り、たぶん朝の6時ごろ目覚めると
サキはまだ企画書を書いていた。眠気がもたらす圧倒的な性欲はすでにどこかに
消えていて、僕はサキに携帯の番号を聞いたけれど全く無視され
紳士的に家を後にした。ブーン。

 まだみんなが眠っている土曜日の朝の東京をオープンで走るのはなかなか気分がいい。
それにしても、もったいない事をした。また会えるといいけれど。
そう思わせる雰囲気を持った女の子だった。白いふかふかの絨毯みたいに。
まあいずれにせよ、と僕は思う。
番号を聞き出せなかったのは残念だけど、絨毯は大きな収穫だ、と。
また一歩クールに近づけたのだ。

tokyo adrift 2006 07

 サキの家は目白台にある閑静な住宅地にあった。
「父親は会社の近くにマンションを持ってて、母親は旅行中でいないの。
あとちょっとパソコンの事で聞きたい事があるからよかったら上がって」
なんと言っても僕の仕事はウェブインテグレーションという事になっているし、
パソコンのトラブルは多かれ少なかれ誰の家でも起こっているのだ。

 僕は紳士的にトラブルを解決するしおかげで彼女たちは僕を家に誘いやすくなる。
薄い緑と紫の混ざったようなタイルが敷き詰められた駐車場の
アウディとベンツの間に車を停めて、家に招かれた。

 全くもって、もともと余裕がある人間によるちょっとしたセンスをかけた、
小さなところへの贅沢っていうのはなぜこんなに違っていて素敵なんだろうと
思われるような家だった。
まずとにかく、絨毯が白くてふかふかなのだ。
実は僕はもうその時すでにかなり眠かったし、
この絨毯だったら何時間でも眠れるだろうなと思いながらリビングに行った。

 もちろんサキを抱くきっかけみたいなものに期待していたけれど、
それよりも絨毯にまず感激した。
ネコのようにその絨毯で丸くなって寝られたらどんなに幸せだろうとすら思った。

 僕はリビングのソファに座って、それから部屋を見回した。
しっかりとした作りの家具が主張しない程度に置かれており
とにかくこういうセンスを磨くべきなのだろうとはっきりと思った。
クールにアドリフトするためには。

「何か見る?」
「いや何でも構わないよ」
サキはDVDのソフトが並べられたラックから、
どこかのシュールレアリスティックな映像作品を液晶テレビで流し始めた。
主人公たちがスウェーデン語で喜劇を演じているのを2人で見るとも無く見た。

テレビは前から僕が欲しいと思っていたソニーの最新機種だった。全く。

tokyo adrift 2006 06

 サキはなぜかDJブースと反対方向を向いていて、
僕はその正面にいたので自然に視線が絡むようになって、
DJが適当なチルアウトをまわし始め踊りを停止してから、
サキが近づいてきても特に不自然さは無かった。

 耳元で、ねえ、その水くれない?とサキは大声で叫んだ。
僕は中で買うと1本400円もするクリスタルガイザーを壁際から持ってきたところで、
サキにペットボトルを渡してから耳元で叫んだ。
上の階のカフェでちょっと休まない?DJも変わっちゃったしさ。

僕は5年間ほど続けていたwebデザインの仕事をやめて
自分のwebを立ち上げていた。

「売れているものを売るか、ロングテールのニッチ商品を見つけ出して売るか、
どちらかなのよ。例えば私、趣味でクワガタの餌を売っているページを作っている人
知ってるけど、年間の収益は300万近いの。ページなんてもう、
本当にアクセシビリティの観点から見ればひどいものなのに、よ。」
クライアントとして会社に出入りする人間は様々な情報を落としていく。

 自動的にベストセラー商品をピックアップし、
世界中に向けて更新情報を発信し、数年間の経験で培った知識を総動員したページは
確実なアクセスによって毎月楽に生活出来るだけの収益を生み出していた。
後はプログラムが勝手に僕の生活費をさらに稼ぐのを待つだけだった。

 細かい修正は繰り返していたが、
そのようなわけで極めて暇な状態だったので、かわいい女の子がうまい事
車に乗ってくれさえすれば、家まであるいは、
僕の部屋まで送り届ける役割をこなしていた。
だからカフェではほとんど何を話したか覚えてないし、
あるいはいつも通りの事しか話していないし、
つまりサキはおなかが減っていたけれど手持ちのお金がちょっと無くて、
僕は女の子を抱きたかったとかそういう事だ。

最初はそういうつもりだったけれど、
話しているうちにこの子となら話してるだけでいいやと思っていた事だけは覚えている。

tokyo adrift 2006 05

2

 浮遊感ばかりで何をやっても満たされなくて、どこかに虚がある。確かに生活感は
消そうと努力している。何か現実感が無い。

 代官山や青山の地下できちんとしたウォッカの入ったモスコミュールで、
あるいはトマトジュースの入ったブラディーマリーで適度に酔っ払い、
ペットボトルに詰められた冷たい水とともに、あるいはタバコの煙とレーザー光線の中で
曖昧に踊って酔いを醒ました後に、246や旧山手通りに路上駐車した
僕の新しいミニクーパーはオープンカーで、しかも4シータだったから
女の子2人組みも乗せる事が出来た。

 基本的に自分からは話しかけないので、当然、女の子を連れ出せる事は希だったけれど。

メインの仕事がコーディングだったからからかもしれない。
ほとんどのやりとりをメールでしていたからかもしれない。

 1日中PCの前でキーボードを柔らかに打ち続けているせいで、
思考そのものがQWERTY配列のキーボードで行われてしまい、
自分の思考スピードがタイピングスピードを超えられなくなったという思いに
囚われている。
その反動かもしれない。僕はふとした瞬間に、急激に向かってくる眠気とともに、
暗闇の中で頭の中で同時に3つくらいのストーリーが文字で進んでいる状態に
になる事があった。それらはいつも曖昧で何でも無かった。
それぞれの繋がりはないし一度には一つのかけらしか読めないので
自分では全く意味がわからない。文字が、僕の頭の中を支配していた。

 とにかく、僕は女の子とのやりとりとか、同時に何人かの女の子の彼氏になる事に
すでにうんざりしてしまっていたけど、でもやめる事は出来なかった。
クラブに行くのは先月やめた。タバコの煙にうんざりしていた。

 そう。サキに初めて会ったのは2ヶ月くらい前だ。
僕はめずらしく気に入った曲が立て続けにかかっていたので
ほとんど踊る事に集中していた。
僕の目の前で綺麗に楽しそうに踊っていたのがサキで、
ステップに合わせて華奢な体が周囲の空気をかき回していた。

tokyo adrift 2006 04

ふと気がつくと僕は完全に1人で、女の子の気配は消えていた。
30分ほどだろうか?探した。見つからない。
女の子の影を探していると視界が良くなった。
急に風が止み、雨も小降りになった。
滲んでいた遠くの光がはっきりと届くようになった。
もしかして海に飛び込んだのかもしれないな、と思い
すっかり暗闇に慣れた目で海面を見渡したが、そこには小さな波が
繰り返されているだけでどこにも女の子の姿は見えなかった。まさかね。

 それからもう一度、周囲を歩き回ってから車へと戻った。
ぐちゃぐちゃになった靴をビニール袋に入れ、サンダルに履き替え、
全ての服を脱ぎバスタオルで体を拭いて着替える。

コーヒーを飲みながらエンジンをかけ、カーナビでこの付近の地図を呼び出した。
無人に見える島も少し歩けばコンビニもある。
突拍子も無いがまあ歩いて帰れなくも無いだろう。

 携帯をPowerBookに繋いで、衛星写真を呼び出した。
同時に東京湾のリアルタイムの潮流を調べる。
そこから万が一女の子飛び込んだ場合に流れ着く、
あるいはたどり着くであろう場所を割り出そうとしたけれど
潮流なんてほとんど無かった。飛び込んだ方向から右の人工島、
あるいはこの島にも人工海岸があり、そこにたどり着く可能性もあった。
人が入れるのかわからないが羽田空港側にも、
データ上は砂浜らしき場所が見えた。直線距離ではそれほど遠く無いし
僕でも泳げそうだった。彼女は泳げそうな格好では全く無かったけれど。
PowerBookは何も言ってくれなかった。
コンピュータが何かしらにせよ助言してくれるのはきっともっと先の未来だ。

 そのようにして僕はまだ2回しか会った事が無い、
ほとんど何も知らない女の子を見失った。僕は本当によく物を無くすのだ。
それも大切な物を。

tokyo adrift 2006 03

 車の中に風が吹き込んで、すごい勢いでドアがしまった直後2人ともずぶ濡れだった。

 対岸に見えるはずの空港は誘導灯だけが淡くほぼ真っ暗だった。
こんな時間に、こんな天気で飛ぶ飛行機は無いのだ。終電が終わってから
走り出す貨物列車のように、あるいはサン・テグジュペリの夜間飛行のように、
飛ぶ飛行機があるかもしれないと少し期待していたのだけど。
目の前に広がる黒い海と真っ暗な対岸とすごい勢いで染みこんでくる雨が
僕の気分を少し曇らせた。まあでも台風しに来たのだからこれくらいは許容範囲だ。

 左にリサイクル工場を見ながら海の方向へ歩いた。
リサイクル工場が出来たばかりの頃、工場の建物そのものが
ポストモダニズムの建築スタイルを象徴する建築として、
そして工場内でモダンアートの展示をしていて見に来た事があり、僕はそこを知っていた。

 嵐の夜にも関わらず、鋭利な角度で空を切る屋根と
白と灰色の中間で統一された重機がライトアップによって近未来的な、
つまり女の子と2人でいるにはうってつけな誰も知らない空間を作っている。

 さらに海の方へと歩いてみる。未舗装の土が「くにゃり」として
泥水が染みこむ気配がする。まともな靴を履いてこなくて良かったなと思う。
風が強くて時折体が流される。潮の臭い。海岸に近寄るのは少し怖いくらいだ。

 女の子はトト、と地面を確かめるようにステップすると
両手を広げ飛行機の真似をしたつもりなのか、風を確かめるような仕草をしてから、
大きく旋回するような動作をして僕に近づいて何か話した。
何だって?左バンク?確かに左に綺麗に旋回したけど。
雨と風が激しすぎて聞き取れなかった。

 女の子は僕の耳に口をほとんどくっつけて、ほとんど叫ぶようにして話した。

「ちょっと散歩してくる」

全 然左バンクなんかじゃない。
僕はその聞き間違いにおかしくなって1人でくすくす笑い、おっけー行ってらっしゃいと
身振りで示して飛行場の淡い光を見ていた。

 もちろん僕はこれから女の子と一緒に部屋に帰って
一緒にシャワーを浴びるかもしれないなとどきどきしていたし、
女の子に初めて会った時もと同じようにして
ほとんど叫ぶようにして話していた事を思い出して空想、
– この場合妄想かも知れないけれど – にふけっていた。

tokyo adrift 2006 02

 最寄りの首都高の入り口を思い浮かべながら、羽田空港の向かいの人工の島までの
道をシュミレーションする。そんなに首都高には詳しく無い。ETCはセットされている。
カーナビは使わない。迷っても、あるいはたぶん迷ったくらいの方がいいだろう。
味気ない方向指示を聞くよりは。
なんと言っても台風しに行くわけで、目的地のある移動では無いのだ。

 首都高を南下するうちに弱かった雨が激しくなる。台風のためかもともと少ない交通量は
いつも以上に減っている。日曜の夜中にドライブする人間はそれほどいない。
ワイパーは滝のように流れる雨を左右に弾き飛ばしていて、雨音は全ての他の音を
遮っていて、繰り返し聞いた事のある僕にしかその歌詞は聞こえないだろうし、
ただでさえ単調で意味の無い単語とリズムを繰り返しているKRAFTWERKは
ほぼ完全に意味をなさない。

 女の子は無言で、雨が斜めに通り過ぎるサイドウィンドウから滲むビルの明かりを
覗いている。あるいは何も見ていないのかもしれない。
僕も気の聞いたせりふが思いつくわけでも無かったし、
何か言ったところで聞こえるとも思えなかった。声の通りが悪いのだ。
視界の悪い東京の夜を黙々と走る。
「きみみたいにきれいな女の子」について少し考える。
ピチカート・ファイブ。結構お気に入りの曲だ。何年前に流行ったのだろう。
そう言えばわがままな女の子が夜中に出かける歌詞だったっけ。

 レインボーブリッジを渡り高速を降りて島に向かう間、
女の子は誰かにメールを打っていた。
僕は雨で見えなくなったセンターラインをいくつかまたいで、
夜間は無人になる島への橋に向かった。

 台風でも日曜でもきちんとトラック運転手は仕事を遂行しており、
紛れ込んで難なく島に入る事が出来る。
以前立ち入り禁止の看板を見た事があったような気がしたのだけど。
気のせいだったのかも知れない。

「空港がその先にあるんだ」
車に乗ってから、一言も話していないせいで僕の声はどこか他の誰かの声に聞こえた。
女の子は特に何も言わず、こちらに一瞬首をかしげた。
僕は飛行機が好きだった。そういう事を説明しようかと思ったけれど、
女の子を見ているとなぜか黙っている事が極めて自然な事に思えた。
僕も再び黙る事にした。
リサイクル工場の脇に車を止めて、エンジンを切ると雨が風とともに
幌を打ちつける音だけが響いている。
僕達は同時に車を降りた。

tokyo adrift 2006 01 東京アドリフト

1

 東京をクールにアドリフトする、というのが23歳の僕の目標で、
それは概ねうまくいっているように思えた。
雑誌から切り取ったような、あるいは誰かはドラマに出てくるような
と言うかもしれない。誰もがそういった作られたイメージに軽い憧れを持っていて、
現実はもっと退屈な事を許容していた。

 僕は雑誌もドラマも全く見ない。
世の中の大抵の女の子達とは話が合わないかもしれないけど、
大量に作られたイメージに傾倒しがちな位置からは離れたところに居たかった。
それなりに流行っている音楽を聞き、小説を読み、そしてたくさんの
アートスペースに足を運び、生活感をこっそりと消し、
自分のスタイルを作ってアドリフトを続けていた。
 そういうのがクールだと思っていたし、それ以上の生活が出来るわけでも無かった。

 夏がまだ、東京から離れていない時期だ。
「台風しに行かない?」
電話がかかって来たのは午前3時過ぎ、僕はちょうど電気を消して寝る準備をしていた。
当たり前だ。真っ当な人間は3時にはレム睡眠の最初の周期に入ってるはずだ。
 でもディスプレイには「きみみたいにきれいな女の子」という表示が点灯していた。
登録した記憶はもちろん無い。
暗い部屋にしては明るすぎる表示を見てまぶしさに目を閉じ、
そのままバイブレーションを消して眠りに潜り込むつもりでボタンを押すと
通話状態になってしまっていた。静かな部屋でマイクから声が聞こえる。

「台風しに行かない?」
 きれいな女の子のお願いだったら別に断る事も無いので「いいよ」とだけ返事して、
枕元のスタンバイ状態のPowerBookを立ち上げ
スペックの落ちた気象衛星からの情報を簡単にチェックする。
台風の中心部は東京湾を通過中でどうやら今は雲の切れ間のようだ。
外が静かになっている。コーヒーメーカーのスイッチを入れる。

 10年ほどで1000枚くらいになった部屋の中のCDから
Yukihiro FukutomiとKRAFTWERKのCD2枚を苦労してピックアップして、
あまり防水のきかない軽いジャケットを着て車に乗り込む。
 後部座席には大きめのバスタオル2枚と着替え、
ステンレスが中空になっていて保温性の高いTHERMOSのポットに入れたミルクコーヒー。

 じゃあ目白駅の前で、20分後。と言って電話を切った女の子は、
もう一度会えればいいなと思っていた女の子だった。

 目白駅前は工事中で、いつも通り誰もいない。
「どうぞ」
吹き付ける風で飛んでくる雨に濡れないように傘をさしながら
紳士的に助手席のドアを空け、女の子を乗せて駅前をUターンする。

refrigerated

冷蔵庫を開けると、扉のすぐのところにあるペットボトルや
牛乳を置く場所があると思う。そこに目的の本はあった。
冷気と湿気でいつもより重くなっている本を手に取り、
3日前ほどに入れたしおりを取り出す。

このところ会議のタイミングなどで夕飯を食べそびれる
事が多い。そうなるとその場しのぎで野菜ジュースなどを飲んだり
おやつを誰かからもらったり(売店もすでにしまってしまっている)
するわけだが、体に悪いことこの上ない。

ただ元々そんなに食べる方ではないので、家に帰ってから
何か食べるでもない。ゲームもやらないので最近は本を読む時間が増えた。
複数の本を並列で読むことはよくあることで、そのうちどれかが
何か食べたくなった、あるいは飲みたくなった夜中に冷蔵庫を開け、
目的の食べ物の代わりに冷蔵庫に入れてしまったとしても
全く不思議はない。

そのようにして家の冷蔵庫には今7冊ほど、読みかけの本が入っている。

business hotel ビジネスホテル

それって強迫観念なんじゃないの?
と誰かが言う。

出張で泊まるビジネスホテルの嫌なところなんて
列挙の暇がないわけだが、
僕にとって致命的なのはタバコのにおいだ。

経費を最大限節減したこういったホテルにおいては
空調は基本的に全ての部屋の空気を均一にかき混ぜる
くらいの意味合いしか無い。
禁煙の部屋を指定しても空調からいくらでもその
粒子は入り込んできて頭痛を引き起こす。

まず部屋に入ったらエアコンとバスルームの空調を切る。
可能であれば窓を開ける。
次に可能な限り熱くしたシャワーを湯船に向かって
放出する。バスルームのドアは開ける。

そのうちに空気中の水分が飽和状態になり
部屋中のガラスや鏡や金属のプレートに水滴が
つき始めたら、タバコの粒子はその水滴の中に含まれている
事実においは若干引いている。

照明と連動したバスルームの空調はつけたくないので
ドアを開けたまま暗がりでシャワーを浴びる。
暗いことは悪くない。良くない部分が見えにくい。

そして窓を閉め、ホテルがその自己修復能力で
いつも通りの乾燥した空気を提供し始める頃に
ようやく眠りにつけるのだ。

そういった一連の作業を必ずしなくてはならないし
もちろん環境にも良くないし、
出来れば僕だってそんなことしたくない。