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nemui nenai fly ねむいねないフライ

ねむいけどねない
どこから来るのかこの心理

新しい洗濯機は静かで
日付が変わってから洗濯する
扉を閉めれば何も聞こえない
食器洗いの方がよっぽどうるさい

夜の闇に洗濯物を干して
朝の光で洗濯物は乾ききらない
だから帰ってきて夜の闇で洗濯物を
取り込んで
でもたまに乾ききってない

洗濯物はベランダにぶら下がったまま
ねむいねないフライ
ねむいねないフライ
そんな感じでゆらゆら浮かんでいる

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personal shredder パーソナルシュレッダー

転送されてくるリアルなメールの殆どは何らかの宣伝で
ヴァーチャルな世界と代わり映えしない。
住所と名前が記されたそれらをいちいち細切れにして
ゴミ箱に放り込むには僕は疲れすぎている

シュレッダーにかけるべき物はそのようにして部屋に
残滓として蓄積され一向に減る気配を見せない。

家に帰る途中、昨日まで気づかなかった店に明かりが灯っている
中にはいるとシュレッダーがいくつもおいてある。
僕はその中から記憶と時間も裁断できるものを選び
変わりに月曜日の夜と火曜日の朝の記憶と時間を差し出す。

それらの記憶と時間はシュレッダーにかけられて
ばりばりと音を立てて修復不可能な細かい塵みたいなものに変わり
それらがぼんやりと光っているのがわかる。
とてもきれいだ。

僕の塵は350mlくらいのビンに詰められて店の奥に
持って行かれた。

そのようにして僕はパーソナルシュレッダーを手に入れた。
部屋にはきれいに光っているビンがたくさん並んでいる。

僕はもう誰なのか、何なのかわからない
ただビンが増えていく。

the beginning of the end 4 日常のループ

右目は回復しない
おそらく使いすぎているし疲れすぎているし
部屋が乾燥しているのだろう

次の日
目が覚めるとその1時間くらいは問題がない
ただしとても眠い
目がなかなか開かない

また窓の外を見る
コンクリートジャングル、僕はこれを求めていた
ふと視界にまた違和感を感じる。

空が二つに切り取られている

開かない目で僕は二つに切り取られた空を見る
出かけるまで時間がない
素早くCCDで記録する

再生紙のメモ帳に書き込む
空、半分、5/18、8:10
halfsky_1.jpg

手早く着替えて
うがいをし、顔を洗い再起動をかける
僕自身に。
なかなか起動しない
僕自身が。

同時進行で温めたスープが吹きこぼれそうになる
ゆっくりとスープを飲み干し、
部屋を一通り掃除する

気がつくと空は元通りになっている
あいつらがたぶん元に戻した
僕はそれをまたCCDに記録する

空、半分、5/18、8:45
halfsky_2.jpg

気づいたのはおそらく僕だけだ
もう時間がない。
僕は出発する。

そしていつも通り日付が変わってから帰ってくる

再生紙は無くなっている

CCDの画像なんていくらでも加工が出来る
やつらは言うだろう
でも僕の頭の中には記録している

トレント・レズナーが囁く
俺たちは遠くに来すぎたんじゃないか
this is the beginning of the end
空、半分、5/18、8:10。間違いない。

the beginning of the end 3 日常のループ

ここ2週間連続して常に家に帰ると日付が変わっている
ひどいときには会社を出る時点で日付が変わっている

朝は特にひどい

無理矢理体を起こして何かを食べると何故か動けるようになる
それまではこれはちょっと
起きられないんじゃないかというくらいなのに

帰り道、品川の人たちは少しだけ陽気だ
飲み会の帰りに時間帯がぶつかるから
抑制が少しだけ外れている
彼らはみんな自分の家に帰るために歩いている
コントロールされていない

聞こえてくるのは足音だけじゃなくなっている
路上でへたくそな音楽を奏でる人
仲間内で何か大声で話す集団
やっと解放されたのだ

そういう意識を僕は一人で認識する
いつも通りそういう認識よりも手術した目の調子が良くないことの方が
僕にダメージを与えて
ブレイクダンスの練習で流れるヒップホップをBGMが
トレント・レズナーに切り替わる
僕はそのリズムに合わせて足早にそこを過ぎ去る

the beginning of the end 2 日常のループ

いつも通りの手順で自転車に乗り駅までの2分をこちらに
向かってくる人たちを抜けて疾走する
電車の中では何も考えない
考えるにはあまりに疲れすぎている

僕は品川の駅に到着する
そこには無限に近い人たちがいる
彼らは何も話さない
ただみな同じような方向に向かって歩いている

なんだっていうんだろう
どうしてだれも音をたてないんだろう

だんだん気持ち悪くなってくる
誰もが抑制されている
誰かが叫びだしてくれないのか
どうしてだれも口を開かない
しゃべることを忘れたのか

無言の動物たち
これだけの吼えられる動物が
みんな無言だ
どうしてこれを誰もおかしいと思わないんだろう

聞こえてくるのは足音と電車と自動改札のエラー音だけだ

トレント・レズナー
this is the beginning、
続けてof the endとささやく

僕はそこで気づく
みんなコントロールされている
行きたくて行っているわけじゃない場所に
無言で向かっている

僕も無言で向かっている
何なんだろう

そこでいつも通り僕は走り出す
何かを変えないと
僕自身を変えないと
そういう事を思っているわけではない
ただ走る

たぶんネオがなんとかしてくれるだろう。

the beginning of the end 1 日常のループ

朝目覚めると微妙な違和感を感じる。
毎日のことで違和感そのものに違和感がなくなっている。
ループする思考のままカーテンを開け
朝食の用意に取りかかる。

今日はパンの番だ。
オーブンを250℃に設定し加熱を開始する。
凍結したトーストにハムとタマネギ、
チーズ、それからピザソースをかける。

オーブンは150℃くらいになっている。

いったん作業をやめて窓の外を見る。
窓は密閉され硬度を保ち外界の音を遮断している
今日も晴れている。

視界に動きがある。
300mほど離れたビルの屋上に
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たち
何人も上がってくる。

同じような格好をした同じような人たち
何かの運動を始める

thebeginningoftheend.jpg

それは僕には全く同じ人に見える
わざとランダムに動きのタイミングをずらしているけれど
実はそれはプログラミングされているだけで
同じ人なのだ

いくつかのビルの屋上が見える
室外機、避雷針、フェンス、そして屋上への扉

奇妙に時間が静止してから
いくつかのビルの屋上の扉から
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たちが
何人も上がってくる。

ランダムに動く何者かの動きが
視界のそこここで見られる

僕は窓から離れてオーブンからトーストを取り出す
少し外に気を取られすぎた。サラダがまだ出来ていない。

テレビではエージェントスミスが
Everything that has a beginning has an endとつぶやいたところだ
ネオ、君なら出来る、と僕は思う。

アスパラガスを少なめの水でゆでてからふと
音楽をかけていないことに気づく。

アンプのスイッチを入れ昨日の夜入れたままのCDを再生する。
テレビの音は消えてすぐにトレント・レズナー
ささやき出す。

this is the beginning

やつらはおまえのマインドを読む
俺たちはもうだいぶ高くまで登ってきた

housedust ハウスダストを空気清浄機で防ぐ

今日も竹内マモルから相談があった。
私は数ヶ月前に空気清浄機を購入したのだが、
彼もハウスダストによる鼻炎に悩まされており
その事に関する相談だった。

彼は信濃町の病院で、レーザーによる鼻の奥を治療していたが、
昨年は効いたが今年はあまり効かなかったらしい。

まず彼はあろうことか、プラスマイナスゼロ
の空気清浄機を買おうかなと迷っていたようだ。

ここで私はいつものように、ロジカルシンキングで最も基本的な
フレームワーク思考に基づき論理的にこの選択を否定した。

するとマモルはこうである。

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soreはよくないのかい?

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>さっきのページキャッシュみた?

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うむ
でもyomene

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>え?
>東芝のおなじフィルタつかってるやつは
>http://www.toshiba.co.jp/tcm/pressrelease/061026_j.htm
>これ。4種類くらいあるっしょ

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文字が多いよパーパ
あたまがいたいよー

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そこでマモルには噛んで含めるような説明を余儀なくされた。
±0に搭載されているフィルタの数は1つで、値段的に
同じかそれ以下の空気清浄機でも、著名なメーカーであれば
4つくらいのフィルタが搭載されておりその方がましだぜ、と。

するとマモルはこう言った。

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それともふとんかうかな
誇りの主要因は布団な気がしてきた

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(!!!この子わからないからって話題変えた!!!)

しかし私は経営者であり、またある意味では
マモルの親である。サッカーが出来るだけでは
務まらないのだよ。こういった子供の態度には慣れている。

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>そうだね。
>布団だよ
>まず。無印いってきな。

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私は人情味あふれながら、こう伝えた。

結局のところハウスダストは空気清浄機があっても
ある程度は当然存在するわけで、そのホコリの原因は
花子か、布団か、カーペットだ。

ちなみに花子とはマモルの家にたまに来る犬のことである。
最近バッファオーバーフローしてニュースになったことでも有名だ。

花子は不在、とのことなので
(バージョンアップ中だろうか)

ホコリの原因は絞られてくる。
カーペットか、布団だ。

しかし問い詰めてみるとマモルの部屋にはカーペットが
無いことが分かった。案の上だ。カーペットなんておしゃれなものは
マモルの部屋には無い。当然だ。

ちなみに、安いカーペットほど(アクリルとか)ホコリというか
抜け(毛?)が発生しやすいという噂もある。
またどのようなカーペットでも最初は構成する繊維なり毛なりが
抜けやすいという。

ともかく、原因はもはや布団に絞られた。

私はこう提案した。コンサルテーションにおける提案には、
マッキンゼー・アンド・カンパニーのMECEが重要である。
その意味は漏れなく、ダブりなく、だ。詳しくは
意思決定のための「分析の技術」をご参照願いたい。

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>カバー変えな。無印行ってきな。

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そうだね
それだよ

布団ごと買うよ今日

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>買いな。
>
>あと
>
>花子をベランダに。

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!!!!!
まって!!!!
あいつすごいんだ
部費部費すごいんだよ

注意)ぶひぶひ、が興奮して部費部費になっている。

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>あとプルックもベランダに。

=================

まって!!
プルックは!
プルックは!
あのこは勘弁してあげて!!

=================

>甘やかさない!!!!!

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(ここから新書・~花子予備軍の子供達~
という本が生まれるのだが、その話は次回にして
ここはハウスダストの話を続けよう。)

結局その日マモルは無印へと向かった。

携帯にメールが来た。

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「無印いったぜ。くくく。」

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>買ったのかい?

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「kawane」

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>!!!!!!!!
>
>買ってないのか!!
>どうしたんだマモル!!!

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「ネットで買う」

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そういうことなら仕方なかった。
しかしその日、不運にも無印良品ネットストアがサイトリニューアル中で
不安定だったことがちらりと不安要素になった。

マモルからメールが来た。

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ふとん買ったワショーイ

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でも無地からメールこない。なJ

コネーーーー
koneeeee

koneeeeyooooooo

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> どうしたんだマモル!!

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mujiからメエルこねえ

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>まあまて。あせんな。
>Muji.netリニューアル中だったから。
>昨日すJ
>URL変更とかでコンラソしてたから
>タブソマモルのチュウモソ無効だよ

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kitaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!

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>!!!!!!!!!

 
  
  
  
   
=================

くくくく

しっかりきた税

【ご購入明細】
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■注文番号:4000000852650987
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注文受付日時:2006年12月08日 21時05分
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商品名: 手選別羽毛掛ふとん・二層式・SD(シングルベッド対応) 
170×210m
品番 : 6114055
単価 : 42,000,000
数量 : 270
小計 : 42,000,000
————————————————–
送料計: 525
消費税: 20,250
合計 : 42,020,250

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>ちょ!!!!!!!!
>おま!!!!!!!!
>これ!!!!!!!!!
>4千ま・・・送料安すぎ!!!!!!
>!!!これ催眠商法だから!!!
>マモル!!目を覚まして!!!

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わしはこれを売るんじゃよ
わしゃしゃしゃしゃ
月末までに売らねば破産じゃよ
わしゃしゃしゃしゃ
 
 
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>!!!!!!!!!!!
>おgちゃん!!!!
>ちょ!!!
>マットも買わないと!!!
>これとかどうかな?
 
 
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たか!!!
irane
マットirane

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>まって!!!
マットも!!!マットも買ってあげて!!!!

http://images.google.co.jp/images?hl=ja&q=matt&btnG=%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E6%A4%9C%E7%B4%A2

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長編だった・・・
なおこのお話は8割くらい
ノンフィクションです。

dive

「ええ、2分間ほどです。」

「昔水泳をやっていたんです。3kmほど、毎週。だからですかね。2分間くらいなら
大丈夫なんです。」

「ええ。ほら、指と指の間のヒレがまだ少し残っている。」

「それほど広くないのです。どういう体勢かちょっと自分ではわからないな。
とにかく、頭を底につけるんです。」

「そうですね。基本的には。閉じているので、真っ暗です。
たまに目を開けることもありますね。ただ、しみそうなので大抵は閉じています。」

「うーん、このところ、ほとんど毎日ですかね。落ち着くんです。不思議と。」

「ウィー・・・、ウィー・・・、ウィー・・・という低周波のような音が
聞こえてくるんです。最初は表面の水が波打っているのかな、
あるいは湯沸かし器の音かな、と思うんですが、そのうち気づくんです。
自分の耳に送られてくる血液の圧力で音がするんです。」

「確かに周囲の音がなぜかクリアに聞こえますね。でも大抵、何の音も
しないんです。誰もが寝ているし、もともととても静かな住宅街ですから。
本当に誰もが寝ているんです。」

「ええ心拍にあわせて。いや、でも音は、やっぱりウィー・・・ですね。
何か圧迫的な、水圧で、ですかね。」

そのようにしてこのところ僕は浴槽で1人、ダイブを行っている。

tokyo adrift 2006 10-end

2時間ほどそこにいただろうか。
灯台のつもりで、ハザードを点灯させながら。時折車から出て、海面を眺めながら。
雨が小降りになり止んだ後、風が猛烈に襲ってきた。

あらゆる雲はその風で遠くにかき消されたようだ。
朝日が羽田空港の左から昇り、恐ろしいほど青く綺麗な空気が
空を覆っている。東京で綺麗な空が見られるのは嵐が去った次の日の半日だけだ。

僕はあきらめてPowerBookに接続していた携帯を引き抜き、
その直後、通常回線に繋がった携帯がメールを着信した。

僕は基本的にデート中、携帯をオフにする。
たくさんの女の子と同時に付き合っている時の手段なのだ。
デート中に他の女の子からの電話もメールも届かない。

その事をサキは知っていたのかもしれない。
サキの家でも、僕は携帯を切っていたはずだから。
あるいは車に乗り込む時に僕が電源を落としたのを見ていたのかも、と思う。
僕がメールを受信するのはサキと別れた後だという事を知っていたのだから。

受信したメール。女の子の名前はサキだった。
僕はサキと何か話さなければならないし、たぶんサキもそれを求めていた。
短いメールを返信する。

いつの間にか太陽は完全に上っていて、上空を大きな音を立てて飛行機が過ぎ去った。
結局のところ、僕には待つ事くらいしか出来なくて、
横を通り過ぎる大型トラックの振動にも起きずに昼過ぎまで眠った。
何も変わらなかった。ひどく空腹だった。

tokyo adrift 2006 09

3

「表現できない体験をしないといけないんだと思う。
考えがまとまらなくて、記憶が文字ベースになってる
話す言葉よりもパソコンで打ち込む文字の方が多いせいだと思う
思考が文字になってて 映像は無い

思考が文字であり言葉であると気づいたのはどれくらい前?
大抵の思考は言葉で、音楽や映像は出てこない。
キャパシティ・オーバー
言葉すら、なかなか出てこなくて。

音楽や映像を符号化する事か
もしくは、キャパシティがずっと多い頭を持ちたい。
どちらでも構わない。
私にとっては思考も記憶も文字

これ以上文字だけの世界では前に進めない

私がやりたいのはコンビニのお菓子じゃなくて
もっとずっと人を幸せにするような、いつまでも残るものをデザインする事。
文字だけでは表せない世界に飛び込まないといけない

だから台風という力を借りたいの。戻ってくるから心配しないでね
戻ったら、会いましょう。

PS.海に近い方がいいと思ってたの。趣味が合うと思う。
サキ」

隣にいた僕に宛てたメールだった。