personal shredder パーソナルシュレッダー

転送されてくるリアルなメールの殆どは何らかの宣伝で
ヴァーチャルな世界と代わり映えしない。
住所と名前が記されたそれらをいちいち細切れにして
ゴミ箱に放り込むには僕は疲れすぎている

シュレッダーにかけるべき物はそのようにして部屋に
残滓として蓄積され一向に減る気配を見せない。

家に帰る途中、昨日まで気づかなかった店に明かりが灯っている
中にはいるとシュレッダーがいくつもおいてある。
僕はその中から記憶と時間も裁断できるものを選び
変わりに月曜日の夜と火曜日の朝の記憶と時間を差し出す。

それらの記憶と時間はシュレッダーにかけられて
ばりばりと音を立てて修復不可能な細かい塵みたいなものに変わり
それらがぼんやりと光っているのがわかる。
とてもきれいだ。

僕の塵は350mlくらいのビンに詰められて店の奥に
持って行かれた。

そのようにして僕はパーソナルシュレッダーを手に入れた。
部屋にはきれいに光っているビンがたくさん並んでいる。

僕はもう誰なのか、何なのかわからない
ただビンが増えていく。