朝目覚めると微妙な違和感を感じる。
毎日のことで違和感そのものに違和感がなくなっている。
ループする思考のままカーテンを開け
朝食の用意に取りかかる。
今日はパンの番だ。
オーブンを250℃に設定し加熱を開始する。
凍結したトーストにハムとタマネギ、
チーズ、それからピザソースをかける。
オーブンは150℃くらいになっている。
いったん作業をやめて窓の外を見る。
窓は密閉され硬度を保ち外界の音を遮断している
今日も晴れている。
視界に動きがある。
300mほど離れたビルの屋上に
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たち
何人も上がってくる。
同じような格好をした同じような人たち
何かの運動を始める
それは僕には全く同じ人に見える
わざとランダムに動きのタイミングをずらしているけれど
実はそれはプログラミングされているだけで
同じ人なのだ
いくつかのビルの屋上が見える
室外機、避雷針、フェンス、そして屋上への扉
奇妙に時間が静止してから
いくつかのビルの屋上の扉から
上着を脱いだ白いワイシャツのスーツ姿の人たちが
何人も上がってくる。
ランダムに動く何者かの動きが
視界のそこここで見られる
僕は窓から離れてオーブンからトーストを取り出す
少し外に気を取られすぎた。サラダがまだ出来ていない。
テレビではエージェントスミスが
Everything that has a beginning has an endとつぶやいたところだ
ネオ、君なら出来る、と僕は思う。
アスパラガスを少なめの水でゆでてからふと
音楽をかけていないことに気づく。
アンプのスイッチを入れ昨日の夜入れたままのCDを再生する。
テレビの音は消えてすぐにトレント・レズナーが
ささやき出す。
this is the beginning
やつらはおまえのマインドを読む
俺たちはもうだいぶ高くまで登ってきた