僕がその事に唐突に気づいたのは飛行機の中だった。
あるいはでも、これはもう前にも同じ事を書いた気もする。
でもまあいいや、と思う。
2冊の本を読み終えた僕の中には文章が渦巻いていて、
様々な女の子達の物語が浮かんでは消えていた。
それらがあまりに断片的で、でも何か形にされたがっているのを
感じ、結局日本時間AM2時に僕はいったんは触るつもりの無かった
ラップトップPCを、頭上の棚に入れたバックパックから取り出した。
いつもそうだ。いつも、書き始めると思い浮かんでいた
文章は僕の中からどこかに流れていってしまい、
代わりに今、タイプしているような全く新しい文章が生まれる。
しかしこれは仕方のないことで、
もう僕はこの現象に長く付き合っているので
躊躇無くタイプし続ける。
タイプしながら次の文章が生まれる。先を知っているのは
どちらかと言えば僕自身の指で、
頭ではない。
僕のブラインドタッチは我流で、両手共に三本の指しか使わない。
そのスピードは特に遅くもないが早くもない。
おそらく次の文章を探しながら書くのにはちょうど良いスピードで
タイプが続けられている。
話を元に戻そう。
長くに渡って僕がこのような意味のない文章を書き続けていた
理由に唐突に気づいたのは飛行機の中だった。
僕は色々な出来事の出力として、文章を書いている。
2冊の本を読み終えて文章を書かずにいられなくなったのは
おそらく僕の入力→容量部分がいっぱいになっているためだ。
僕は何らかの入力があった場合出力として文章を出し、
その結果僕自身には何かの切れ端みたいな物しか残さない。
記憶が全てにおいて曖昧で
何もかも覚えようとしないのも、
これで説明できてしまうのではないかとも思う。
しかしそれは言い訳であることもわかっている。
原材料に乏しい我が国は、
安価な原料を輸入して付加価値を持った商品にし、それを輸出します。
これを加工貿易と言います。
おそらくこういう話だったと思う。高度経済成長期における日本の
あり方、義務教育でさんざんすり込まれた文句だ。
あるいは僕の文章もこれに似ているかも知れない、と思う。
誰にとっても付加価値は無い、と言う点さえ除けば。
エミクロくんが一瞬目を覚まし、
あなた寝なさいよ
キーボードの音だって耳障りだし。
そう言ってまた眠りにつく。
なるべく音を立てないようにキーボードを打つうちに
エミクロくんの言葉で僕の思考は現実に引き戻される。
確かに意味のないことをしているな、と。
まあいいや。
ラップトップを閉じて僕も眠ることにする。
まだ夜明けには時間がある。