指定された建物は駅から7分くらいのところにあった。
総ガラス張りで、入り口には警備員が立っている。
自動ドアをくぐると大理石調の床、天井は15mくらいあるだろうか。
広い空間が広がっている。
空間の端にある受付まで歩いていくと、
3人の受付嬢がおりどの子に目を合わせれば良いのかよくわからなくなる。
距離が3mくらいになった時、向かって右手の受付嬢が軽く立ち上がり、
こちらへどうぞ、という身振りを無言で行う。
「コンファメーション・ナンバーをお願いいたします。」
59L2E032V
私は暗唱してきた番号を淀みなく口にした。
受付嬢は私の所属と名前を確認し、ICカードを手渡す。
こちらのカードで右手のゲートをくぐっていただき、
16階の受付で書類の提出をお願いいたします。
エレベーターは高層階用が左手奧、
もしくは右手奥に6基ずつございますのでそちらをご利用下さい。
私は警備員が見つめる中、ゲートをくぐり高層階用の
エレベーターに乗り込んだ。エレベーターはアルミ調で鋭利な印象で
ボタンにクッション感が無く、製造メーカーが記載されていない。
奧だけガラス張りになっておりビル群が見える。
16階で降りるとスーツを着た35歳くらいのこれといって特徴のない人間が
私の名前を確認する。
そのまま説明を受ける。
「左手奥の扉を開けていただき、
右側のエレベーターで地下1階まで下りてください。
エレベーターを降り、左手の扉を開け、
廊下を直進していただき右手の扉が入り口です。」
私は記憶力がある方だが、これと言って意味をなさない事柄、
あるいは具体的にイメージできない道案内を覚えるのは苦手だ。
しかし頷いてエレベーターに向かった。