市況かぶ全力2階建での不動産関連の記事で何度か出ていた「狭小邸宅」と「ニュータウンは黄昏れて」を立て続けに読んだ。ともに家を買う前に読んでおくと非常に参考になるのでは無いかと思う本で、
あここからネタバレ含みますすいません。
狭小邸宅の方は不動産販売を行う下っ端営業マンの話。家を買う客が持っている理想は何らかが一致しない。広さ、予算、駅からの距離、南向き、云々かんぬん。住宅展示場などで見ることが出来る家は、あくまで理想の家でありそのイメージを持ってくる客に、主人公の営業マンの手腕では売れない。
罵詈雑言を上司から浴びせられながら、偶然物件が売れたことをきっかけに、不動産販売の営業いろはをたたき込まれる。
最初に理想からほど遠い物件を見せる、みたいな基本のところから、ダミーの着信でローンが下りなくてキャンセルになった偽電話まで、最終的には客に何かしらの妥協をしてもらいながら客を興奮状態に置いて売り切るという営業の手法を学んでいき実践する様子が描かれている。半分くらいはノンフィクションなんじゃ無いかと思われる。こちらとしてはそれらに対して準備する事が出来るという意味ですごく有益な本に感じる。
ちなみに読んだ後にこういうサイトを読むとさらに参考になった。http://suma-saga.com/abuse/
以前家を探しているときに、いきなり車に乗せられて営業所に連れて行かれたことがあった。その時の体験がよみがえって来た。なぜ文学賞を受賞しているのかはよくわからないが、何だろう最後の方の主人公の空虚感が良かったのかもしれない。
上司の台詞もいちいち印象的。ここにまとまっている。
http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65764482.html
ニュータウンは黄昏れての方は、バブル期に働き盛りでニュータウンに物件を購入しローン金利も6%とか、5000万円のローンで返済が1億とか(ちゃんと数字覚えてない)そういう状態にある中で築30年の物件が1500万円分の価値しか無いという状態に陥っている親子を描いた作品。親の方は合弁やリストラの憂き目に遭う父親と、団地の管理組合と立て替え問題などに巻き込まれていく母親、ここに27歳のバイトで生計を立てている娘の方にもエンターテイメント性のある話が入ってきてストーリーとしておもしろい上に、ニュータウンの状況とバブル当時の購入に至る経緯に関する描写がとてもうまく書かれており、知見として役に立つ+おもしろさで一気に読み進められる。
ゴミ出し場の位置が遠いとか、「購入時には考えなかったが毎日の生活に地味に効いてくる」みたいな描写とかも良い。
ここで描かれているのは都内にものすごくうまく乗り継げば30分くらい(不動産会社が言う通勤時間)、状況が悪いと1時間かかるエリアのニュータウンなのだが、ここ1,2年の都内の不動産価格の上昇とオリンピックに向けた4,5年のバブル感と、30年後を考えたときに、自分の住んでいるエリアや、今で言うと湾岸エリアがどのようになっていくのか、特に小説中で描かれる、駅からの距離がネックとなり大手ゼネコンが降りていく描写が実は一番重要な気がしてくる。
作者の後書きのところで、神楽坂(あたり)に結局家を買ったという文章があるのだが、ここの経緯も含めて参考にしたいと思った。