LED 電球だからって壊れないわけではない

「会社でLED電球を購入したらすぐ壊れた。LEDなのになんで?」
と父親に聞かれたのだが、
こういうのって製造業に関わっている人間ならまああって当たり前
と思うのだが一般的な人には全く意味不明なようなので、
その時に説明した内容にさらにちょっと追加して書いてみようと思う。

たぶん工業製品のばらつき という現象の理解をしないといけない。

大量の部品を生産するにあたって、部品一つ一つは
厳密に言うと少し異なっている。

例えば毎回同じ「ハサミで切る」という工程があったとしよう。
・新品のハサミで切った場合と、1000回切ったハサミ
→たぶん切れ味が違う。だから顕微鏡とかで細かく見ると、
 切れ目が違う。1000回の方がちょっとざらざらしている、とか。

・気温32度湿度70%の時のハサミと、気温14度湿度20%の時のハサミ
→たぶんハサミの刃の膨張とか、切られるものの状態とか、色々違う
 もしかすると錆びとか付いちゃっているかもしれないし、でも気温が高い方が
 切られる方がやわらかいから綺麗に切れているかもしれない

こういう風に、様々な要因で少しずつ異なるものが出来上がる。
ハサミというのは加工機械なわけだけど、
加工機械に限らず原材料、あるいは加工工程、それからその後の
発送状況によって、使い手に届くモノはものすごい数の要因で
少しずつ異なって出来上がってくる。

一番悪い原材料、一番悪いハサミ、一番悪い箱詰め、
一番運転が荒いドライバーが一番悪いサスペンション状態の
トラックで一番悪い道路で運んだ、みたいに数百の要因が
全て一番悪い状況を回避することまで考えてしまうと、

とても良い質の材料であったり、
3回に1回ハサミを交換しなくてはならなかったり、
優秀なドライバーをそろえなくてはならなかったりと
製造コストが跳ね上がり、値段が上がり競合他社と戦えない
部品が出来上がることになってしまう。

それでは売れないので、
不具合要因を統計的に管理し、例えば上記のような
最悪最悪最悪の組み合わせは1000万個に1個出来てしまうんだけど、
残りはこの範囲内のモノが出来るので、この寿命を保証できる
というのが一般的な手法である。

逆に言えば、
1000万個に1個は犠牲にする。
これはたぶん出来てくる製品が命に関わるか関わらないかなどで
全然数値的には異なってくるのだが、
大量にモノを作る上で製造コストと不具合の一部の犠牲は
避けられない。

会社によっては10万個に1個かもしれないし、
1万個に1個かもしれない。
統計的には確実に不具合がでるんだけど、
それは新品と交換すると割り切る。

そうしないと1000円の製品が100円高くなっちゃう。

1100円で1万個売って全部故障しない
1000円で1万個売って1個故障する。
でもその1個は製品保証範囲で無料で新品に交換する
この選択肢を経営側で持っていたら
下の選択をするかもしれない。

あるいは、
1個でも不具合が出れば大きなイメージダウンになるから
1000円で1万個売って全部故障しない でも会社は1個100円損する
とか。

そのあたりは非常に判断が難しいが、
とにかくそういうわけで
「会社でLED電球を購入したらすぐ壊れた。」
となる。

手元に届いた後の寿命についても、
その製品が出来の良い方で出来ているか
あるいは出来の悪い方で出来ているか

使用環境が高温多湿か涼しいさわやかな場所か
など様々な要因で異なってくるわけで、

統計的に長寿命であったとしても
自分の使っているモノが長寿命かどうかはわからないわけである。

寿命が長い日本において
自分が長生きするかどうかはその人による
というのと同義かと思う。

ちなみにうちではLED電球を電気屋で
さんざん見て迷ってから購入したのだが
しかしいざ使ってみると、
電球色独特の暖かみが出なかったので結局今使っていない。

別のLED光源は使っている。