ZUTTO by ZOJIRUSHI 象印 ズット 炊飯器にかいま見る外観基準とデザイン戦略の重要性

昨日白物家電にデザインを求めるのは無理なのかとか書いておいてこれ。
しかし内容は真面目すぎて読むのがかったるいかも知れない。

kojimaさんからメールをもらい、
象印のZUTTO(NP-DA10-SA)という炊飯器が似合うのでは?
と言われ見てみると一目惚れ。買おうと思っていたTIGERの3合の炊飯器と
同じような値段にも関わらず、5.5合だしこのデザインなら買いだと判断、
価格.comで価格を調べ3分後には楽天からお買い上げありごじメール。

zutto_zojirushi.jpg

面白いのは楽天の評価というか感想ページを見てみると僕と
同じような行動に走った人が少なからずいること、そしてこの炊飯器に関しては
味も良くデザインで買ってしまっても問題ありません的な感想が多いこと。

去年あたりからずっとデザインが何かしら重要だというメッセージを
ESCAPE WHILE YOU CAN、通称「逃げ回る僕とリオネル」でも発し続けてきた訳だが
こういったニーズが確実にあり僕は一人じゃないんだ!という安心感すら
感想を読んでいて感じる。というのは半分冗談である。
どこからどこが半分なのか、そこは自分で考えて欲しい。

もう一つ。価格.comで明らかに外装設計に携わる設計者かデザイナーの
駄目だしが、そんな専門用語書いてたらわかる人1%もいないだろうという
内容で書かれていて笑った。

しかしその人の言うことはもっともで、テレビやオーディオ・ビジュアル製品と比べて
白物家電は圧倒的に外観の基準が低い。
洗濯機や空気清浄機、暖房器具を見ていて感じる内容がそのまま書かれている感じである。

その人が書いていた内容をそのままここに書くと、

 「ただ、胴外装はステンレスではなくプラスチック(ABS?)、
  デザインにこだわってる割にはパーティングラインがくっきり残っていて
  近くで見ると安っぽい感じです、蓋外装プラスチック(PP?)もヒケ、
  フローマークのようなムラが多いようです(離れてみればかっこいいので私は購入しましたが)。
  胴外装の上かどに、いつの間にか小さな傷が付いてしまったのですが、
  それを見る限り、塗装は薄く弱いようです、蓋外装のプラスチックも
  軟らかい素材のようなので「ZUTTO(ずっと)」というシリーズですが、
  慎重に扱わないと「ずっと」は使えない気がしてます。」

ふうむ、最初は笑ったもののこれは確かになるほどな、と思う。
通常プラスチックの製品は金属を彫った金型に溶かした樹脂を流し込み、
この樹脂が固まってから金型から取り出す、という過程で作られる。

この人が書いている内容は、
例えば金型内部で部品の厚みが極端に厚くなってしまった部分に樹脂が集中し、
その後冷やされて部分的にへこんでしまう「ヒケ」など、
外観的に問題が生じる部分の指摘だ。

例えばこの「ヒケ」の場合、設計的に部品厚みを調節するとか、金型の工夫、
金型の温度や樹脂の流入速度など様々な要素をコントロールすることやノウハウで
回避出来ないこともない。しかしある程度そういうものが出てきてしまっても
出荷して良い、という象印社内の基準があれば問題ないのでそのまま出荷される。

つまり、デザインを気にして購入する層だからこそZUTTOの外観に関する不満が
価格comに書かれるわけで、通常の炊飯器ではこんなコメントは絶対つかない。
そういった意味ではこれまでの外観基準でデザイン家電を作ると
どこかから文句が出てくる可能性がある、ということを
白物家電業界は知っていなければならないかもしれない。

いずれにせよ、04年発売にもかかわらず今まで売り続けているという点から、
炊飯器の製品ライフがどの程度かわからないが
この商品がかなり成功しているであろうことがわかる。

感想を見る限り、デザインにこだわり、かつ機能を捨てていないという点が重要だ。