怠惰に起きて怠惰に朝食を食べ、
少ししてからコテージから見える浅瀬まで泳ぐことにする。
泳ぎ初めて1分もしないうちに、海底から現れた細長い
奇妙な魚がくねくねと泳ぎながら寄ってくる。
通常魚は泳ぐ人間に対して無関心なので、
寄ってきた時点で少し違和感を受ける。
よく見てみるとこれがコバンザメだった。
サメとか鯨とか、あるいはイルカ?のお腹にくっついて
プランクトンを食べるアレだ。
これが我々にくっつこうとして付いてきたのだ。
しかしこいつ、見れば見るほど気持ち悪い。
くねくねと身をよじらせて近づいてきて、
頭の上にある小判状の吸盤がなにやらざらざらしている。
ボラボラ島でエイに吸い付かれ
内出血と傷を負ったエミクロくんの脇腹を思い出し、
こいつに吸い付かれたら相当
やっかいなことになりそうだと思い不安に駆られる。
フィンで蹴ろうとしたり、
わざと大きな水音を立てたり、
思いっきり泳いで追い払おうとする。
しかし当然のことながら、
海に住まう物に泳ぎのスピードで勝てるわけもない。
フィンでの攻撃も精細さに欠ける。
見れば見るほど気持ち悪い大きな目と
扁平な口にZOWARとしながらだましだまし泳ぐ。
コテージからは浅瀬であるとか、
珊瑚礁の場所はハッキリわかる。
しかし一度泳ぎはじめてしまうと、
どこに浅瀬があるのか本当にわからなくなる。
視線が海面になってしまうことで
位置感覚がつかめなくなる
吸盤に吸い付かれる恐怖におびえながら
ムダな体力を消耗しつつ、15分くらいで浅瀬にようやく到着する。
浅瀬の魚たちを見ていると、
コバンザメは海底で休憩しながら我々の出発を待っている。
しつこいやつだ。
帰ろうと思い泳ぎはじめるとまた近づいてきた。
そこで我々はコバンザメが入り込めない浅瀬を
選んで魚を見ながら迂回し、
珊瑚礁のいくつか見える場所を選んで帰ることにした。
迂回してから、フィンの音をなるべく立てないようにして
魚を身ながらコテージに帰る。
うまいこと到着できた。
コバンザメには本当に疲れた。