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flare

携帯のメモリースティックから
太陽フレアのようなものがうつった
写真が出てきた。

flare.jpg

その磁気嵐で
何隻かの宇宙船が
座礁しかけたみたいだ

wildcard

「それで、これがワイルドカードだ」
手品師が切り札なんだ、と言って渡してくれた2枚のカードには
それぞれアスタリスクとクエスチョンマークが印刷されていた。

「任意に使える。
 アスタリスクは無限だ。でもクエスチョンマークは1なんだ。」

「なるほどね。これでその帽子から色々なものを選択して開くわけだね」

「確かにそういう使い方もある。このカードも結構使うよ。」
カードにはドットが2つとスラッシュが描かれている。

「これはペアレント・ディレクトリだね」
僕だってそれくらいは知ってるのだ。

「そう。リレミトみたいに使うんだ。」
手品師は自慢げに言った。

「WEBは洞窟じゃない。キチンとした標識をもって作るべきなんだ」
これはだんだん気づいてきたことだ。

「ビットなんだよ。探検したほうが面白い。」

参考:
ワイルドカード
ペアレント・ディレクトリ
リレミト

iidabashi transfer

地下6階の大江戸線の飯田橋駅プラットフォームを降りると、
本当に誰もいない。村上春樹・ハードボイルドワンダーランド的な
エレベータに乗り込み、B1が表示されて改札に到着しても、
そこには駅員1人いない非現実的な空間が構成されている。

「現在この改札は無人です ご用の方はボタンを押して下さい」
モダンアートと思われる蜘蛛の巣のような緑色のダクトで出来た
オブジェが階段の天井を覆いプラットフォームまで続く。

監視カメラだけがときおり何かを反射してキラリと光り、
誰もいない階段ではエスカレータが動き続ける。
こういう場所でこそセンサが搭載されたエスカレータを設置するべきなのだ。

JR線や地下鉄が数本乗り入れている飯田橋駅とも離れ、地下で
通路が繋がっているわけでもない。
まったく東京都は何をしてるんだろう。

sacrifice

アイロンをかけてもらいに来た。
僕は既に寝ていて、以前クリーニング屋の主人だったそのおじさんは
丁寧に僕の腰にアイロンをかけた。

腰が痛くなったのはやっぱり販売応援でずっと立って仕事をしていたから
なんだろうなと思う。アイロンは少し熱いお風呂くらいの温度になっていて、
なるほど確かに気分がよい。

カチッ、ヒュッ、ボッという音と共に
アイロンは瞬間的に200度近くの温度になる。
改造されているのだ。この一時的な高温状態が肩こりや
腰痛に効くとして、この店は繁盛していた。

「軽ければ軽い方がいいです。
 ヘリウムと水素を混ぜてるですが、
 なかなか割合が難しです。
 ヘリウムは簡単に手に入りますが水素は入らなです。」

カチッ、ヒュッ、ボッ
会話が終わるとおじさんはスイッチを入れる。
あまりに短い時間なので火傷にもならないのだ。

「ではどうやって爆発させているんですか?」
「塩酸にアルミホイルを入れて作るです。」

理科の実験じゃないか。
「クリーニング屋は向かなかったです。ひとさまの服を管理しきれませんでした。」
「だろうね」

っていうのが初夢でした。

たぶん、安い料金でお客から大量に衣類を請け負ってそのままトンズラした
クリーニング屋の番組をテレビで見たことが片隅で残っていたんだと思う。

レイモンド・チャンドラーとマイケルギルモア?読みたいなっていうのは自分用メモ。

weird (sequel) トワイライト・ストーリー

前編

靴を返した1人が下がると、
残りの2人が手を繋ぎ、ゆっくりとネコになった。
彼らはもともと手のひらくらいの大きさしかなかったので
キチンとしたネコのサイズになるまで少し時間がかかったが、
それほど長い時間というわけでもなかった。

そのネコはおおかたの捨てられた子猫と同じように、
典型的な堕落の坂を転げ落ちたタイプのネコだった。

子猫の頃は近所の子供達や大人達みんなにかわいがられていたものの、
隣の家が惰性的にエサをあげ続けた結果、エサの与えすぎで
致命的までに太り、しつけが行われなかったためかネコ的な怠惰さが
鼻につくようになり、やがて子供達からもいじめられるようになり、
ゴミ箱をあさって追い払われるような、まあそのようなネコだった。

それにしても、どうしてこんな場所にそのネコが現れたのか僕には
よくわからなかった。ネコはうちの隣の家に拾われ、時々うちの庭なんかに
現れていた。ここはうちから歩いて5分は離れているだろう。

ネコは話し始めた。その話はネコ的な何かに遮られ、非常に曖昧だった。
うちの庭について話していたかと思うと次の瞬間には朝のゴミ箱の中味について、
カラスとの攻防について話していた。おおかたは自分自身の自慢だった。
しかし結局のところ、ネコが言いたかったのはこういうことだった。

「私はあなたに以前水をかけられたり、追いかけられた事があるが
それは非常に道徳的に悪い事であなたにそんなことをする権利はない。
謝ってもらえないだろうか。」

権利がないだって?
ご存じかも知れないけれど、場合によっては、
僕は必要以上に冷たくなることも出来る。
このネコはスポイルされきっているのだ。

肝心の右足の靴は無かったけれど、僕は思いきりネコを蹴った。
渾身のインステップキックだ。
ネコは突然の行動に対応できなかったらしく、そのまま勢いよく
砂場の縁にぶつかりゲフっと声を上げた。そして分離した。

「悪いけれど、君らはこのネコの味方なんだろう?つまり。」
靴を持っていった1人に僕は問いかけた。

「私たちネコさんの味方ないし、あなたの味方ないです。」

「悪いけれど靴を返してくれないかな」

「靴、私たち食べる。」

「わかったよ。じゃあ左の靴もあげるから3人で取ってくれよ」

やれやれ。彼らを3人とも踏みつぶしてから、
僕はブランコの脇に置いてあった靴を履いて帰宅した。

僕がネコを追いかけたり、ホースを使って水をかけたりしたのは
そのネコがゴミ箱を漁っていたり、庭に糞をしたり、吐いたり、
盛りがついたときに真夜中に鳴いたりしていたからだ。
あるいはそれはネコにとっては、こちらに迷惑がかかるとは思っていなかった
行為かも知れない。

全ての物事は主体が何かによって変わってくる。
しかしこの場合、飼い主がしつけるべきだったし、ネコも自覚するべきだった。
3人も自覚するべきだった。
そして僕は3人とネコの存在を無にすることで、なんとか家に帰ることが出来たのだ。

(販売応援のメタファーとして)

weird (prequel) トワイライト・ストーリー

丸ノ内線の終電が終点の茗荷谷に到着し、
降りたときから何か少しずれたような空気が流れていた。
仕事を終えて最寄りの駅まで歩いたときはとても寒かったのにも
関わらず、どちらかと言えばなま暖かい風が吹いていた。

奇妙な風に乗って大きなポプラの葉が坂道を覆っていた。
カサカサ、パリパリと葉が足下で音を立てて、
坂を上り、ふと見上げると、街灯の白い光の横に
月が真っ白な真円となって空に浮かんでいた。

そもそもそれほど気乗りしない飲み会に参加し、めずらしく
何杯かアルコールを口にしたからこんなに風が暖かく感じるんだろう。

その公園は住宅の間の、小さな車がやっと入れるくらいの幅の
道が何度も90度に折れ曲がった先にあった。公園にたどり着く
残りの二つの道のうち一つは階段で、もう一つは人がやっと1人通れるくらいの
狭い、家と家の間を通った路地だった。
知らなければそんな公園にたどり着くことは出来ない。
たとえたどり着いても、寂れた小さな砂場と、
ブランコが2つある15m四方くらいの隠されたような空間があるだけだ。

僕はトイレに行きたくてそのような込み入った場所にある公園に行ったのだ。
路地裏を抜ければそれほど遠回りにはならない。

住宅地の道を折れ曲がり、公園の入り口にたどり着いたとき
手のひらくらいの小さな人らしきものが、3人でリスの乗り物を点検していた。
おそらくそれは点検していたのだろうと思う。リスは既に塗装の大部分がはげて
しまっており、片目になっていた。3人のうち1人はしっぽに乗っていた。
残りの二人は塗装のはげ具合を確かめるように、なにやら思案しているように
少し距離を置いてリスを眺めていた。

真夜中を過ぎた時間にもかかわらず、
満月と都会の出す光が薄い雲に反射して奇妙に明るかった。
僕は視界の左に点検する3人を捕らえながら、足早にトイレに向かった。
3人は僕には何も興味を持っていないように思えたし、そもそも僕はトイレに
行きたかったのだ。

ただし、僕の視界から3人が消えた後、彼らが僕の方をいっせいに向いたような
気配があった。申し合わせたような動作の気配が、何かの暗示のように伝わってきた。

コンコン

ノックだった。トイレに僕が入っている事は明らかだし、彼ら以外にノックする人が
いるとも思えなかった。僕は少し頭を整理してからトイレを出た。
3人は砂場の近くに移動しており、僕はそちらに向かって歩いていった。
3人の前に立つと、彼らはおもむろに僕の右足の周りに集まり、足を持ち上げようとした。
しかしそれほど力が無いのだろう。足は持ち上がらなかった。

意味が良く分からなかったが踏みつぶしてしまうと困ると思い、
足を少し上げると彼らは僕の買ったばかりの革靴をすっぽりと脱がし、
1人がどこかに持って行ってしまった。

ちょっとそれはひどいんじゃないかと思ったが、同時に納得した。なるほど。
僕は片足で立つ羽目になり、その場からちょっと動けなくなってしまったからだ。
1日中慣れない立ち仕事で疲れていたし、本当に動く気がしなくなってしまっていた。
きっと彼らにとっては、僕が逃げないようにする必要があったんだろう。

「ネコさんから話があるです」
靴をどこかに置いて戻ってきた1人が、小さな声でささやいた。
ささやきは暖かい風に乗って、どこからともなく聞こえてきた。
あるいはそれは頭の中に直接響いていたのかもしれなかった。

続く

Haruki Murakami 村上春樹

中国で爆発的な人気らしい。村上春樹の翻訳本。
昨日読売新聞かどこかの夕刊の一面に出ていた。
ちょっと前には朝日新聞で1面使って、村上春樹を
3人がてんで勝手に分析をしていた。25周年で本の表紙が
新しくなったり、本屋の店頭にもたくさんならべてある。

最近村上春樹を徹底的に読み直しているのもあって、
ueDとよく村上春樹的なメールとかメッセのやりとりをしている。
つまり、

踊るんだよ
かっこう

とか書いてるわけだ。

村上春樹といえばちょっとだけ象徴的な思い出があって、
それはたぶん中学生くらいか、あるいは高校に入り立ての頃だ。
つまり6年とか7年前の話になる。
本当に興味がさほど無かったからのか、ほとんどと言っていいほど
細かい部分が思い出せない。

友人の父親の知り合いで、東大の教授がいて、その研究室を
訪問させてもらった。僕と、友人と、友人の父親と、
友人の父親の知り合いの女性(たしかクラスメイトだったと思う)と、
その娘。合計5人。

たぶん進路とか将来的なことを決めさせるのに良い機会だろう
ということで行ったような気がする。
僕の行っていた中学はそのまま高校に上がり、クラスの6人に1人が
東大に行くような学校だったので東大の研究室に行く、というのも
あながち現実味のない話ではないのだ。

しかしながら中学生にとっては大学の研究室なんて、
博物館くらいの興味しかない。教授にしたって博物館に展示してある
抽象画に対するくらいの興味しかない。

5人で教授の話を聞いて、(全くその内容は覚えていない)
その後だ。友人は中1にして村上春樹のハードカバーを教室で読んでいる
ようなとても進んだやつで、(僕にとってまずハードカバーは値段的に手が
届かなかった)僕はおおかたの村上春樹の作品を彼に借りたような
記憶がある。世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドしか知らなかった
のだが、風の歌を聴けから羊をめぐる冒険、ノルウェイの森とかそういった
一連の本を借りたか、あるいは存在を教えてもらったかした。

教授の研究と関係あったのか無かったのかわからないが、ふとその話題に
なった。友人と僕が村上春樹の作品が好きだ、と言った話題に。

そうしたら、友人の父親の知り合いの女性が言った。
「村上春樹の作品のいったいどこがいいの?ノルウェイの森読んだけど。
セックス描写?」

この瞬間、僕は正直に言って「ああ、この人は何にもわかってないんだ
本当に何にもわかってないんだ 何を説明しても無駄だろうしこれから先
わかることもない。大体中学生の男の子に対してそういうことを言うのは
恥ずかしくないんだろうか。この人は絶対に好きになれないな」
と感じた。そして何も言わなかった。いや、訂正すると言えなかった。

その時友人がどう感じたのかわからないけれど、とにかく僕には
そこに無力感とか、あきらめを感じざるを得なかった。

それからその友人の父親が、その知り合いの女性を
昔好きだったのだろうという事実をなんとなく知らされるうちに、
かなり気が滅入った。

そのあと渋谷に出て、みんなで夕飯を食べようということになった。
僕はbunnkamuraのおしゃれな、おいしいピザを出すイタリア料理
の店を知っていたので(その当時、中学生にしてはすごい事だと思う)
そこはどうかな、と提案してみた。しかしそれは受け入れられず、

教授のいきつけの飲み屋みたいなところに連れて行かされた。
そこの店は明らかに飲み屋だったし、ガード下のちょっと汚い店で
ますます気が滅入った。というのは僕は親に飲み屋というものに
連れて行かれた事が全く無く、そういった雰囲気になじめなかったのだ。
大体おなかが減っているのにおなかにたまる食べ物が出てこない。
つまみばかりなのだ。

そして鳥の刺身か何かがテーブルに出てきた頃、
小さなゴキブリが壁を這っているのを
発見して、もう本当に僕は絶望感を感じた。

とにかくその場は収まり、
おなかが減っていたのでだいぶその刺身なんかを
食べた記憶がある。あとになってそれは致命的だったと気づいても遅い。

そして帰りに、車で送ってもらった。
一方通行を避けるために遠回りしたのだけれど、
それを何か勘違いされたのか、友人の父親に咎められた。
もう説明する気も起きなかった。

数日後、僕はおなかを壊し熱が出て学校を数日間休んだ。
最初は全くわからなかったのだが、
よくよく調べてみると程度の差こそあれ、研究室に訪問した全員が
なんらかの吐き気などに見舞われていた。
明らかにゴキブリのいた店の料理が原因だった。

きっと厨房もおそろしく汚かったんだろうな。
おそろしく汚い手でおそろしく汚い包丁で、おそろしく汚いお皿に
刺身を盛っていたんだろう。そう思った。

親が電話をしたりして全員が同じような症状であることをつきとめ、
店に慰謝料の請求を申し出るという段になって、友人の父親と
その知り合いの女性は、教授に申し訳ないというような理由で
その食中毒を、まあ大したこと無かったんだしそこまでしなくても
いいんじゃないか、という話を持ってきた。

ここで僕はもう一度うんざり、本当にうんざりすることになった。
3日間くらい本当にものすごく熱と吐き気と腹痛にやられたのに、
この人達はいったい何を考えているのだろう、と思った。

結局1人3万円くらいの慰謝料を店からもらった。

そういうわけで、僕は後に会う女の子が村上春樹を読んで
あまりおもしろくないなという感想を言ったとき
少なからずショックを受けたわけだし、
消失感や村上春樹の作品を読んで感じるあらゆる感情・感覚が、
人によっては理解出来ないということにようやく気づき、

そのことは自分の感覚が人とは違うということ、
あるいは自分の感じていること≠他人の感じていること
自分≠他人という認識をはじめて知ることになり、
閉鎖的な精神世界から脱することにも繋がったのだ。と思っている。

まあなんというか、他人の創ったものに対して
文句を言ったり批評するのは、創ることよりも
数百倍、あるいは数万倍簡単なのだ。

time axis, place shift 時間軸と空間軸

「時間軸と空間軸を狂わす音楽や小説がある。
 まるで部屋が深海をただひたすら海底を目指し、
 降下を続ける潜水艇になったような気さえするのだ。」

2004/10/04 ESCAPE WHILE YOU CAN / Yukito Inoue

というわけで兼ねてから興味があったブライアン・イーノのCDを
買ってみる。amazon掘り出し物市でなんか安かったので。

future options 未来の選択肢

結果としての未来の選択肢が限られているとすれば
それは現在が映し出されただけかもしれない。

サイケデリックな絵を見て満足する男のように。

BGM: Jamiroquai / Space Cowboy

consequences

何かの結果として現在があるとすれば
未来は現在の結果として存在する

future
consequences
balance
defection

つまり現在を。