moderntimes – matrix 「検索から、監視が始まる。」 「起きろネオ、マトリックスが見ている」

伊坂幸太郎の新作モダンタイムス
あの有名なチャップリンの映画からのタイトルのこの作品、
帯には「検索から、監視が始まる。」

かなり久しぶりに、読んでいてとにかくわくわくする作品だった。
時代は近未来の日本、しかし舞台はほぼ現在の日本と同レベルの
環境にいるSE、システムエンジニアを主人公として展開される。

2年前に検索エンジンによる検索で
思考しない方向に自分のアルゴリズムが移ってしまっているという

エントリーを書いたが、その傾向は未だに進んでいる
そもそも自分の「アルゴリズム」と書いた時点で
機械的になっている

今、会社で新人のチューターをしているが
そのチューターを集めた研修で、新人の教育方法で
うまい方法をみんなで挙げてみよう、みたいなワークショップがあり、
そのなかで
「検索して調べるように指導する」
という案が結構な人数の同意見を集めていた

この流れに今更抵抗する気はない。

良く話題に上がるwikipediaの誤りをはじめ、
例えば教えてgoo、Yahoo!知恵袋とかの
誤った回答がベストアンサーになってしまうとか、
違和感は確かに、非常にある。

しかし新聞やテレビがある程度の決めつけで記事なり
報道なりを行っている事実を見れば、それもまた
メディアとしての流れなのかも知れない

作中では情報を選ぶ側のスキルも、非常に軽く触れられる。

物語は歯車としての人間が描かれるが
この世界観はかなりマトリックスの世界にも通じていると思う。
国家を動かす駒なのか、それともマトリックスという機械を動かす
駒なのかの違いであるだけでアノマリーの存在は両方に実在していて
そのアノマリーこそが主人公であるという面白いほどの共通。
もちろんストーリーはマトリックスのそれとは根本的に異なる

伊坂幸太郎の独自の台詞回しによる人物のもつ爽快感もあいまって
最近読んだ本の中にはこれ以上に面白い本は無い。

ただし読むなら魔王を先に読んでおくことをおすすめする

ちなみに円高で送料込み8000円以下になるマトリックスブルーレイディスクを
手に入れた。これがまたすごい。

冗談抜きに、映像を見て鳥肌が立つレベル。
PS3とHDのテレビを持っている人には是非おすすめしたい。
日本語吹き替え、字幕も入っている。